【科学監修】「鉄腕DASH」で木造掃除機はなぜ動いた?〜心臓と吹子の意外な共通点〜

サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。

皆さんの家にある「掃除機」。スイッチ一つでゴミを吸い取ってくれる便利な機械ですが、もし「電気を使わず、木だけで掃除機を作ってください」と言われたら、どうしますか?「そんなの無理!」と思ってしまいますよね。

実はこれ、先日11月9日(日)19時から放送予定の「鉄腕DASH」(⽇本テレビ)で、私が科学監修としてお手伝いさせていただいたお題なんです。

「木造で掃除機を作りたい」という壮大なご依頼に対し、私はある「逆転の発想」をアドバイスさせていただきました。

逆転の発想!「吹子(ふいご)」が掃除機になる仕組み

そのアイデアとは、「吹子(ふいご)の弁を逆にしてみてはどうか?」というものでした。「吹子」と聞いても、ピンとこないかもしれません。これは、昔の刀鍛冶などが火の温度を上げるために使っていた、空気を「送り出す」ための道具です。こちらで詳しく解説をしたので、ご覧ください。

【科学監修】「鉄腕DASH」で木造掃除機はなぜ動いた?〜心臓と吹子の意外な共通点〜

では、空気を「出す」道具が、どうやってゴミを「吸う」掃除機になるのでしょうか?秘密は、吹子の内部にある「弁(べん)」にあります。 弁とは、カンタンに言えば「決まった方向にだけモノを通すドア」のこと。

実はこれ、私たちの体の中にある「心臓とまったく同じ構造」なんです。心臓も、血液が逆流しないようにたくさんの弁がついていて、ドクン!と縮むたびに決まった方向にだけ血液を送り出していますよね。吹子も同じで、ピストンを押したときに空気が「外に出る」ように弁が設計されています。

それならば……。 「その弁の向きを、そっくりそのまま逆にしたらどうなるだろう?」

ピストンを押したときには弁が閉じて空気が入らず、逆にピストンを「引いた」ときに、弁が開いて「外の空気を吸い込む」力が生まれるのではないか。これが、木造掃除機のアイデアの核でした。

アイデアを「形」にする実行力

番組では、このアイデアをもとに開発を進め、見事、掃除機としての機能を持ったものを作り上げていました!

途中で壊れてしまうハプニングもありましたが、それでも確かにゴミを吸い込む力が生まれていたのです。さすが鉄腕DASHの実現力ですね。

今回は「アイデア出し」という形でお手伝いしましたが、頭の中のアイデア(理論)を、実際に「動くモノ」として作り上げることがどれほど大変か、番組を見て改めて感じ入りました。科学の知識と、それを実現する「ものづくり」の技術。その両方が揃って、初めて新しいものは生まれるのですね。

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